現在の共同研究・開発中の事項

1)建築基準法第6条確認審査(検査)

審査申請CAD・BIM等の2D・3Dデジタル審査から中間検査・完了検査のLiDAR SLAMによる3D検査への連続的検査による、審査・検査ミスの排除(ソフト開発による特許・実用新案等取得可能な領域)また住宅性能評価(住宅品質確保法)・瑕疵保険(瑕疵担保履行法)・フラット35等図面審査・現場検査が連動する実務に応用可能(前記基本ソフトの活用で各種審査・検査に応用可能)であり、学術機関・実務機関と共同研究に着手している。*ドローン搭載による撮影(レザー・可視・電磁波機器等)

2)建築基準法第12条定期報告調査

ドローン搭載可視カメラ・赤外線カメラによる外壁調査(前各項に示した内容による高精度化・高効率化のための自律飛行・報告書作成ソフト開発)は既に数年の実績があり、最も困難な赤外線データの自動解析・報告書作成ソフトを開発中である。

前各項に示したオルソ画像からのひび割れ報告書事例を図-4・図-5は静岡県の公共施設のオルソ画像とNSW社の「ひび割れ自動検出ソフト」を使った実証実験結果の一部であるが、ドローン搭載カメラの画素数と撮影距離により、検出精度は異なる。安定したデータ取得のためには、前述の自律飛行システムや搭載カメラの一定以上の機能が必要となる。

ひび割れ情報

ひびID

幅mm

長さmm

0

0.26

49.04

1

0.22

24.18

15

0.34

25.09

16

0.68

39.23

図-5:ひび割れ自動検出ソフトによるひび割れ抽出

3)既存建築物の現況調査

既存建物のLiDAR SLAMによる3Dデータの再現図面化は2Dの図面再現から機器検査(赤外線・電磁波等)併用で意匠図・構造図・設備図の再現を効率化、また、歴史的建造物や古民家等の現況調査や図面再現の高精度化・効率的化手法開発も既に実証実験中である。

*ドローン搭載による撮影と歩行撮影の併用若しくは小型ドローンによる室内撮影

既存建物のLiDAR SLAMによる3Dデータの再現図面化前のデータ取得状況を図-6に示す。

図-6:LiDAR SLAM 実証実験画像
4)上記図面再現による耐震診断

特に電磁波活用(東北大学 東北アジア研究センターで既に特許化されている3D化技術の応用)による木造・RC等のフレーム・躯体内部再現により検査精度向上のためのシステム開発を合わせると、耐震診断や補強設計の効率化を促進できる。

5)新築建物任意検査

確認検査や住宅性能評価等の新築中数回の検査と違い各工程をすべて検査するため近年ゼネコンが第三者機関に依頼するケースが激増しているが、ゼネコンの工程管理や施工ミス防止として、筆者が十数年前に「NMI:新築マンション検査」として検査システムを作成し運用していたが、それでもヒューマンエラーは発生する。従って、前1項のCAD・BIMデータとLiDAR SLAMデータの照合による精度の高い検査が有効となる。

6)擁壁・構造物の調査

市街地の進入困難な擁壁の安全性調査や、足場等の必要なタワーパーキング、高所の袖看板等の現況・劣化・安全性調査にドローン搭載可視カメラ・赤外線カメラ・電磁波装置等(搭載用に小型軽量化)による安全で効率的な調査が可能となっている。現況調査は可視カメラで現在も可能であるが、劣化・腐食等の安全性に係る調査に必要なデジタル機器の開発も進んでいる。                                 

おわりに

「建築検査学」の名称を冠し、本誌に1年間の連載をした時から、検査理念・倫理感は全く変わっていないが、テクノロジーの進化は検査手法の効率化・汎用化を促進することとなった。

それが本文のIT/AIの建築検査学への導入の促進に繋がっていることは言うまでもない。

本文で述べたように、一義的検査理念に基づく中小の検査機関が水平的連携を取りながら、テクノロジーの進化を多角的な視点で監視し、適正な導入を図ることが、中立公正・適正的確な建築検査の確立に繋がることを、また建築業界の信頼性の回復・拡大に繋がるという認識を連携の中で共有したい。

*1:「建築検査学」に関する考察日本建築学会九州支部研究報告2009年3月 第48号

*2:あるレベルまでは単独で調査・検査・検証ができ、状況によって必要な専門分野を特定し、その際の専門家の協力を得ることのできる知識・能力を有し、また統括(コーディネイト)できる者。

*3:「建築検査学」を一通り修得し、各関係専門家間のリスクマネージメント情報伝達等のハブとなり、建築プロジェクトを横断的、包括的にコーディネイトできる者。
参考文献

1)大場喜和:「FINEX」実例、ドローンを活用した建物外壁点検調査の実例、日本建築仕上学会 2017.3

2)ドローンを活用した建物外壁調査事例(建築学会シンポジウム)日本建築学会:2017.5.18

3)赤外線カメラを搭載したドローンによる建物検査(建築学会シンポジウム)日本建築学会:2018.5.17

4)赤外線サーモグラフィ試験Ⅰ(2011)、Ⅱ(2012)一般社団法人 非破壊検査協会