ドローン検査の現状

筆者らの検査は当該建物外壁全体の瑕疵・不具合・劣化状況を調査するものであった。

以下に可視カメラと赤外線カメラの調査方法を示す。

1)可視カメラ(搭載カメラの解像度に留意必要)

業務用ドローン搭載のカメラは4Kカメラであり、動画・静止画共に撮影可能であるが、動画の場合撮影漏れは防げるが、報告書掲載には静止画像化が必要であり、膨大な時間を要するため、現在は静止画のショット撮影をしている。撮影漏れ防止のため、画像間を重ねる撮影(オルソ画像化にも重ね撮影が必要)としており遺漏なく外壁面を詳細に撮影できるが、効率化のため現在進行中の報告書用の画像抽出・分析ソフト開発が急務である。

これらのクラック幅や長さ等の計測は、これまでは基本スケールと外壁現況の画像比率で割り出して来たが、これも現在概ね実用化レベルになった前述の自動検出システム・報告書化のソフトの活用で格段の効率化が図れる状況である。

可視カメラではこれらの壁面表層の明確な剥離状態や不具合は確認できるが、タイルや吹き付け材の仕上げ裏面の浮きや剥離は確認が困難である。従って、これらを補完する意味で、次項の赤外線調査を併用している。

2)赤外線カメラ

赤外線による建築検査は雨漏りや断熱性能・コンクリートの劣化・タイル等の外壁仕上げ材の浮き等ハンドカメラで実施してきた。

しかしながら、ハンドカメラでの外壁検査は地上からでは様々な制約がある。最も重要な撮影ポジションは建物環境によって大きな制約となる。高い建物では赤外線の仰角が50~60度(日本非破壊検査協会4)では45度を制限値としている))を越すと精度が著しく落ちることや、電線・樹木等の障害物、赤外線反射角度に対して対応ポジションが自由に取りにくいなど、市街地では建物環境が赤外線調査に不適な場合もある。

ドローン搭載赤外線カメラ検査では、前記赤外線ハンドカメラの各種パラメータによる制約を格段に排除できる。まず建物直近で撮影できカメラと対象建物間の大気影響・電線・樹木等の、環境障害物を排除できる事や、撮影角度も仰角制限・反射角度制限等の致命的な障害要件を排除できる事がドローン撮影の有利性である.

 

実務検査における問題点と課題

 前項のドローン検査対象の建物は、標準的な規模で標準的な形状の建物を想定していたが、実際に以来が来た事案では高層の共同住宅が相次ぎ、大規模な工場の外壁から屋根までの総体的な劣化検査もある。

高層の建物の最も大きな環境因子は上層階の風速の変化や、中層部のビル風の状況であり、事前の調査では時間経過と共に変化する状況は把握できない。かなりの危険を伴うので、具体の対策としては、風速や風向を体感できる範囲に操縦者が居る必要がある。そのために、高層階は屋上からドローンを離陸させ、風を体感出来る範囲の階まで下ろしながら撮影する必要がある。実際には慣れの問題だけで、極めて有効であり、機体の目視や建物との間隔も分かりやすい。同様に中間階は非常階段等の離陸可能な場所から、状況により上昇・下降して撮影すると安全に撮影することが出来る。

また、ドローンはGPS機能で安定した飛行が可能ではあるが、電磁波の発生場所(市街地では電柱のトランス等)ではGPS機能が切れるので要注意ではある。

前記にもドローン検査におけるいくつかの問題点を挙げたが、現在直面している問題点と課題を以下に挙げる。

1.ハード面(機体機能・機器機能等の不明確点)

1) 機体機能の飛行環境への対応性耐久性等

2) 各種ドローンの実質機能の認識の適正さ

3) 自律飛行・手動操縦等の問題点・安全性・容易性(GPSが切れた場合の安定性の確保等)

4) 電池容量や自給機能(給電施設)の実現可能性

5) 落雷・にわか雨等の急変気象への緊急対応法

6) 小型機での可視・赤外線カメラのデュアル化の可否(中型機には既にデュアルカメラ標準装備品が有る)

7) 飛行中の周辺監視機能(ドローン周囲を地上で再現:別カメラ)搭載可能か(ペイロードの問題)
*現在のビジュアルスラム可能性

8) 超音波装置や電磁波装置の搭載の可能性(装置の軽量化)*電磁波装置のドローン搭載のための小型化は東北大学 東北アジア研究センターで概ね実用化の域にある

9) 自律飛行・デュアル撮影機能で温度上昇時と下降時同一箇所の撮影(トレース機能)の可能性(現在開発中)

10) 各検査機器メーカーとの共同研究の必要性

2.ソフト面(操縦環境・法・制度・GPS・カメラ性能即応解析ソフト等)

1) 操縦環境の類別化(都市部・郊外部・山林部・沿岸部等)によるマニュアル化の必要性

2) 航空法・電波法・道交法・民法等のドローン関連法・制度の方向性の明確化

3) 国家資格化時の「操縦免許」要件の多様性対応

4) GPS及びビーコン基地・携帯電話電波基地を利用した飛行方法の確立(給電施設としても)

5) 撮影の自動化(建物との距離・速度等の制御):鉛直座標による自律飛行ソフト開発(ビジュアルスラム・ライダースラム活用で実用化域にある)

6) 赤外線撮影中の検査遺漏の回避のための地上分析が可能なソフトの開発(現在開発中のソフト)

7) 可視カメラによる画像分析ソフト(欠損、クラック等の幅・長さ計測)の開発(NSW開発済)

8) 赤外線画像解析ソフト(欠損、壁体内クラック等の位置、空気層の壁体内位置等)の高精度化(現在開発中の分析ソフト・クラウドシステム・ディープラーニングシステム活用)

9) 赤外線で不可の計測(クラック深さ等)の補完として、搭載電磁波・超音波装置分析ソフトの開発

10) 現場での報告書(速報・報告書レベルまで)作成可能ソフトか遠隔通信システム開発(クラウドシステムと画像通信機能機器で実現可能)

11) 温度上昇時・下降時の同一箇所の画像を重ね、変状箇所の表示(報告書)精度向上のソフト開発(上昇時一回撮影で問題なければ不要)

 

今後の建築検査とIT/AIの融合

ドローン導入はこれまでの検査機器の改善・開発にも影響を与えているし、筆者らも検査手法の新規開発に大きな影響を受けた。以下にそのIT/AIの建築検査における有用性について示す。

下記項目は当研究所の現状及び今後の研究課題であるが、これらの検査・調査をデジタル化することにより、成果物としての報告書作成ソフト開発も可能であり、既に幾つかのソフト作成に着手している。