7.現在の共同研究・開発中の事項
1)建築基準法第6条確認審査(検査)
審査申請CAD・BIM等の2Dデジタル審査から中間検査・完了検査のLADER SLAMによる3D検査への連続的検査による、審査・検査ミスの排除(ソフト開発による特許・実用新案等取得可能)また住宅性能評価(住宅品質確保法)・瑕疵保険(瑕疵担保履行法)・フラット35等図面審査・現場検査が連動する実務に応用可能(前記基本ソフトの活用で各種審査・検査に応用可能)*ドローン搭載による撮影
2)建築基準法第12条定期報告調査
ドローン搭載可視カメラ・赤外線カメラによる前各項に示したオルソ画像からのひび割れ抽出(図-4・図-5)による高精度化・高効率化のための自律飛行・報告書作成ソフト開発)外壁調査
3)建築物の実態調査
既存建物のLiDAR SLAMによる3Dデータの再現図面化(図-6)は2Dの図面再現から機器検査(赤外線・電磁波等)併用で意匠図・構造図・設備図の再現を効率化
また、歴史的建造物や古民家等の現況調査や図面再現の高精度化・効率的化手法開発
*ドローン搭載による撮影と歩行撮影の併用
4)上記図面再現による耐震診断
特に電磁波活用による木造・RC等のフレーム・躯体再現により検査精度向上のためのシステム開発
5)新築建物任意検査
確認検査や住宅性能評価等の新築中数回の検査と違い各工程をすべて検査するため近年ゼネコンが第三者機関に依頼するケースが激増している(ゼネコンの工程管理や施工ミス防止として、前1項のCAD・BIMデータとLiDAR SLAMデータの照合による精度の高い検査が可能なシステム開発)
6)擁壁・構造物の調査
市街地の進入困難な擁壁の安全性調査や、足場等の必要なタワーパーキング、高所の袖看板等の現況・劣化・安全性調査にドローン搭載可視カメラ・赤外線カメラ・電磁波装置等(搭載用に小型軽量化) *現況調査は可視カメラで現在も可能であるが、劣化・腐食等の安全性に係る調査に必要なデジタル機器の開発
図―4:ひび割れ自動検出ソフト用オルソ画像(建物画像) 図―5:ひび割れ自動検出ソフトによるひび割れ抽出画像
ひび割れ情報 |
||
ひびID |
幅mm |
長さmm |
0 |
0.26 |
49.04 |
1 |
0.22 |
24.18 |
15 |
0.34 |
25.09 |
16 |
0.68 |
39.23 |
図-6は静岡県の公共施設のオルソ画像とNSW社の「ひび割れ自動検出ソフト」を使った実証実験結果の一部であるが、ドローン搭載カメラの画素数と撮影距離により、検出精度は異なる。安定したデータ取得のためには、前述の自律飛行システムや搭載カメラの一定以上の機能が必要となる。

8. おわりに
2016年は「建築におけるドローン元年」などと言われたが、ドローン技術の急速な進化は我々の想定を越しているものと見える。しかし建築の維持保全・調査・検査の精度向上には極めて有益であり、我々が先導して建築へのドローン活用の範囲や方法を提案していくことも重要である。また、自動操縦については更に想定以上の研究が進んでいるが、これは車の自動操縦技術や、対人対物の安全技術が先行して進んでいるので、それ程時間が掛かるとは思えない。
しかしながら、実務上ドローンに係る法整備はほとんど進んでいないように見える。それは現状で社会問題と成る程にはドローンが活用されてなく、大きな事故も発生していない事によるのかもしれない。事故が発生してからの法令強化は、建築業界でも過去に多くの経験をしている。法令強化はドローン活用者の守備範囲を狭めるものと心得て、日常の訓練と飛行環境の適正に関する知見は常に取得しておく必要がある。操縦者の資質として、あらゆる機器操縦者の本分は、謙虚さと倫理観である。
ドローンによる建物検査はまだ数年の経験値しかない。土木関係やその他の建築以外のドローン活用については既に建築の倍以上の経験値を有するものと考えられるが、ドローンの使い方は様々である。またドローンの業務での活用は多岐に渡り、横断的で包括的なドローン環境整備は容易には進まないことが想定される。しかし私達は建築検査の分野に新しい文明の利器を見出した。ドローンを安全に適正に活用することが私達の使命である事は言うまでもなく、関連企業・団体との横断的包括的な研究を促進することが喫緊の課題であると考える。