3.ドローン建物調査の活用

 ドローンのハード・ソフト面での進化は前述のように急速に進んでおり、それらを想定した実務としての検査手法が喫緊の課題となっている。次に、現状の建築検査におけるドローン検査の具体的有効活用方法について示す

1) 既往検査における具体的活用法(図-1)
  1. 既存ビル等の外壁・屋根検査については可視カメラ(4K)による詳細な不具合・劣化状況調査と赤外線による、漏水・仕上げ材の浮き等の検査を実施し、進入可能な範囲での目視・触診・打診調査を併用することで精度の高い検査が効率的に実施可能となる。(施設課のある病院・学校・役所等へ検査要領策定・提供による活用拡大)
  2. 既存戸建等の屋根検査でも、可視カメラと赤外線カメラの併用で前記同様の検査が可能となる。
  3. 新築施工検査では、既にゼネコン等がドローン検査を実施していると仄聞するが、更に拡大が期待される。
  4. 基準法の定期報告では、外壁の検査は赤外線による検査を認めているので、基本的に対応可能ではあるが、実効性の面から、定期報告と併せた付加価値のある、維持保全に有効な検査システムの策定が必要と考える。(大規模修繕のための事前検査等との組み合わせなど)
  5. 住宅性能評価(既存)は実質的には普及が進んでいないので、ドローン導入による話題性と実効性の向上で普及促進に寄与する可能性がある。
2)ドローン導入による新規検査
  1. 既存擁壁検査については、目視・進入可能な範囲で実施はしてきたが、ドローン活用で調査可能範囲が拡大し検査利用の拡大が想定される。
  2. タワーパーキングについては実証実験済みで、最もドローン検査に適した建物形状である。
  3. 高所の袖看板等の劣化等調査(取り付け部劣化・腐食等による落下事故が発生している)
外壁
図-1:ドローン調査活用事例 外壁
タワーパーキング・屋根
図-1:ドローン調査活用事例 タワーパーキング・屋根

4. ドローン検査の現状

 筆者らの検査は当該建物外壁全体の瑕疵・不具合・劣化状況を調査するものであった。以下に可視カメラと赤外線カメラの調査方法を示す。

1)可視カメラ(搭載カメラの解像度に留意必要)

 業務用ドローン搭載のカメラは4Kカメラであり、動画・静止画共に撮影可能であるが、動画の場合撮影漏れは防げるが、報告書掲載には静止画像化が必要であり、膨大な時間を要するため、現在は静止画のショット撮影をしている。撮影漏れ防止のため、画像間を重ねる撮影(オルソ画像化にも重ね撮影が必要)としており遺漏なく外壁面を詳細に撮影できるが、効率化のため現在進行中の報告書用の画像抽出・分析ソフト開発が急務である。
これらのクラック幅や長さ等の計測は、これまでは基本スケールと外壁現況の画像比率で割り出して来たが、これも現在概ね実用化レベルになった前述の自動検出システム・報告書化のソフトの活用で格段の効率化が図れる状況である。
 可視カメラではこれらの壁面表層の明確な剥離状態や不具合は確認できるが、タイルや吹き付け材の仕上げ裏面の浮きや剥離は確認が困難である。従って、これらを補完する意味で、次項の赤外線調査を併用している。

2)赤外線カメラ

 赤外線による建築検査は雨漏りや断熱性能・コンクリートの劣化・タイル等の外壁仕上げ材の浮き等ハンドカメラで実施してきた。しかしながら、ハンドカメラでの外壁検査は地上からでは様々な制約がある。最も重要な撮影ポジションは建物環境によって大きな制約となる。高い建物では赤外線の仰角が50~60度(日本非破壊検査協会4)では45度を制限値としている))を越すと精度が著しく落ちることや、電線・樹木等の障害物、赤外線反射角度に対して対応ポジションが自由に取りにくいなど、市街地では建物環境が赤外線調査に不適な場合もある。(図-2)
 ドローン搭載赤外線カメラ検査では、前記赤外線ハンドカメラの各種パラメータによる制約を格段に排除できる。まず建物直近で撮影できカメラと対象建物間の大気影響・電線・樹木等の、環境障害物を排除できる事や、撮影角度も仰角制限・反射角度制限等の致命的な障害要件を排除できる事がドローン撮影の有利性である。

参考文献

4)赤外線サーモグラフィ試験Ⅰ(2011)、Ⅱ(2012)一般社団法人 日本非破壊検査

 

図-2:赤外線撮影比較 ハンドカメラ・ドローン

5.ドローン検査要領書(概要)案

下記に筆者が作成したドローン検査の検査要領を参考に示す。本検査要領案は、建物外壁・屋根の不具合・劣化等の有無につき、可視カメラ・赤外線カメラを搭載した「ドローン」による検査に関し、公的基・規準に照らし判定するための検査要領としてドローン検査員のために作成したものである。

5.1予備調査
  1. 対象建物周囲の物理的環境を目視により調査し、「ドローン」の飛行環境の適正判定をするとともに、障害の排除の可否、安全性の確保に関する対応等を検証する。また、対象建物の設計図書等による確認も行う。
  2. 「ドローン」の飛行環境が適正に確保できない場合は、通常の目視・機器検査の為の環境確保を策定する。
  3. 「ドローン」の飛行環境の法的制約については、本予備調査結果を勘案し関係機関等への飛行許可・届出に反映させる。
  4. 気象条件については、局地(検査対象建物所在地)の中・短期予報により検査日程を検討し、予備日を含め検査工程を立案する。
  5. 対象建物周辺の関係者への「ドローン」飛行の周知の要否について調査をする。
5.2撮影検査
  1. 本件検査は原則として「ドローン」に搭載した可視カメラ・赤外線カメラにより実施するが、建物環境条件により通常の目視・機器検査を併用する。
  2. 建物の撮影ポイントについては、一級建築士が設計図書及び現況を鑑み、本検査の目的に有用なポイント等を選定し、パイロット(操縦士)に指示する。(図面等資料により予め飛行ルートは作成しておくが、状況により変更が生じた場合等)
  3. 静止画像の場合、撮影ポイントの数量は、撮影遺漏及びオルソ画像化を勘案し、概ね画像の5~6割程度重なるポイント数量とする。動画撮影の場合、解析時にキャプチャーし、静止画像化する。(現状はデータ量の大きさから、静止画像中心)
  4. 水平方向(屋根、屋上等)は形状等により、前項の予備調査時に撮影方針・飛行経路を策定しておき、現場の気象状況を勘案し決定する。水平面のみの検査においても、外壁との取り合い部は撮影対象とする。
  5. 鉛直方向は建物4面撮影とし、高さに拘らず最上階から1階までの通しで撮影するが、飛行経路については予備調査時に一定の方針を決定しておき、現場の気象状況を勘案し決定する。