出典:BELCA NEWS 19年7月 特集「ドローン技術の進歩と建築分野への利活用」(大場喜和 著)

1. はじめに

 前職において「ドローン」による外壁検査を開始したのは2016年6月の事である。実質的には直接筆者らが国交省の飛行許可・承認を取得し、自ら操縦して建物外壁検査に着手したのは、同年の10月からであり、退職までに40棟程度の調査実績を上げている。従来、筆者は打診検査に赤外線を併用した建物外壁検査を実施しており、前前職から15年以上の検査実績がある。

 これらの検査は、建物全体の瑕疵・不具合・劣化調査の一環として実施したものであり、建物外壁に特化したものではない。ただし、外壁の劣化検査では、足場やゴンドラ・ブランコ・高所作業車等に頼らなければ、外壁全面の目視・打診・触診等の詳細検査は不可能であり、これらの代用としてハンドカメラによる赤外線検査をしていたものである。建築基準法第12条の定期報告の外壁検査も赤外線と打診との併用による検査を認めている。しかし様々な工夫はしても、双眼鏡やハンドカメラによる検査だけでは適正な可視・撮影位置が確保されている訳では無い。

 可視カメラ・赤外線カメラの撮影ポジションを格段に簡便に適正化出来るのが「ドローン」であると確信し、建築検査への導入に踏み切ったのである。

 これまで国交省においては、打診に代わる簡便な調査方法として「赤外線による外壁調査(打診との併用)」を認めてきたが、赤外線装置もその特性により使用環境について多くの制限があり、特に撮影ポジションにも制約が有るため、赤外線だけの外壁全面調査は困難な状況にあった。従って定期報告における赤外線の調査は打診調査等との併用を前提とし、報告を受理する側も赤外線の解析に関する知見・経験値が少ないことから報告の有効性にも疑義が生じるなど、不明瞭な部分が存在してきた。

 しかるに、この数年「業務用ドローンによる高所等の撮影調査」が急速に現実化し、前述の赤外線カメラの撮影ポジションの自由度により、多くの制約(撮影位置によるパラメータの齟齬等を含め)が排除されることとなり、筆者らも可視カメラと赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁検査を実用化したのである。

 当然これまでも赤外線による外壁調査は長期に実施してきた経緯もあり、赤外線画像解析にも実績があることから、定期報告に資する外壁調査として有効化出来る前提である。

 このような業界の外壁調査の効率化や有効性に鑑み、国交省も建築基準法第12条の定期報告の有効化・効率化のために、ドローン搭載赤外線カメラによる外壁調査を実効化するための指針策定の委員会を設置し、早期のドローンによる外壁調査の全国的・一義的な調査方法としての確立に向け、基本的指針を策定したところである。

2.ドローン検査の導入から現在までの変遷

 建築検査への「ドローン」導入時は、筆者には「ドローン」について、メディアで報道されている以上の知見も何もなく、漠然とした状況から、いきなりスクールでのドローン操縦研修に参加、飛行許可の取得とともに、可視カメラ・赤外線カメラ搭載の実用機を現場に導入するという、かなり無謀な取り組みとなった。

 この後筆者は、実務利用のための具体の調査マニュアルを策定してきた。建築検査での業務化は筆者らが初めてであり、それまでドローン利用の業務実績は、空撮や土木関係の比較的広い場所でのものが多く、市街地におけるドローン飛行の状況は暗中模索状態であり、運用しながらマニュアルの適正化を目指すしかなかった。

 ドローン搭載可視カメラ・赤外線カメラによる建築検査の変遷は、これまでに執筆1)2)3)・セミナー等で発表してきたので、ここでは現況について述べる。

  この2年ほどでドローン搭載可視カメラ・赤外デュアル化が標準仕様となった機種が登場し、筆者らの手作りのデュアルカメラに比し安定性が増したことは一つの革新といえる。その他筆者が導入初期から提唱してきた、自律飛行に関する技術も進み、GPS依存の自律型から、Visual SLAMやLiDAR SLAM等の可視センサーやレーザー計測による自律飛行システムが確立しつつある。

 また、日本システムウエア㈱の開発した「ドローン搭載可視カメラによるひび割れ自動検出システム」については筆者も実証実験立会や精度向上・建築外壁検査における報告書作成ソフト開発までの実用化研究に参加している。現在筆者が取り組んでいる「赤外線自動分析・報告書作成システムは同社と共同研究中であり、数箇月で基本システムは完成の予定である。また、「LiDAR SLAM」を活用した各種検査への応用システムについては、同社及び東北大学との共同研究として進めている。内容については後述する。

参考文献

1)大場喜和:「FINEX」実例、ドローンを活用した建物外壁点検調査の実例、日本建築仕上学会 2017.3

2)ドローンを活用した建物外壁調査事例(建築学会シンポジウム)日本建築学会:2017.5.18

3)赤外線カメラを搭載したドローンによる建物検査(建築学会シンポジウム)日本建築学会:2018.5.17